*読書記録*

読書記録、日々徒然。映画&ゲームもあります。
あたりまえですが、無断転載禁止ですよ。
と、コミュニケーションの取れないコメント&宣伝目的のトラクバック&ステマは内容問わず削除させていただきますm(__)m
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たら本第44回 種子を蒔くもの、花と緑の物語


 たら本です。

 今回のお題は「種子を蒔くもの、花と緑の物語」
 主催は、GREENFIELDSの美結さんです。

お題は「種子を蒔くもの、花と緑の物語」
◆植物が登場する本
◆花の情景描写が印象的な本
◆植物の息吹、生命力を感じる本
◆植物といえば農作物もOK。あくまで田畑での話で。
◆植物の利用方法
皆様のインスピレーションにお任せします。


彼は花園で夢を見る (Wings comics)
彼は花園で夢を見る (Wings comics)

 いきなりマンガかよww
 でも、これしかないっしょ。
 自分を愛していない男のため、男はそれに気づかないかもしれないのに、花を植え育てる女。
 そして、その愛の純粋さゆえの悲劇が…。
 
 文句なしの名作です!!


 ジョナンサン・ケラーマン「歪んだ果実 」(扶桑社ミステリー)

 小児専門の臨床心理医アレックスシリーズの2作目です。
 小児ガンの患者とその家族のケアを頼まれてたアレックスは、失踪&殺人事件に巻き込まれる。
 
 あんまり書くとネタバレになりそうなので…。
 これで、チェリモアという果物を知りました。今は日本でも、ちらちらと栽培しているところがあるようです。種が多いけど、アイスムリームのような、旨い果物のいいところどりのような、とにかくべらんべぇに旨いらしい。
 植物は人を時に狂わせる。
 納得の一冊です。

 …アレックスシリーズ、めちゃくちゃ面白いのに、どーして日本じゃ人気がいまいちなんでしょうねぇ。アレックスができすぎてるから?(ハンサムでギターも弾けて家事もこなして、信念のためには危険をかえりみず行動する。ついでにお金持ち…。できすぎだww)



測量船 (講談社文芸文庫)
測量船 (講談社文芸文庫)

 最後に、三好達治を。
 「花筐」や「間花集」「艸千里 」など、植物に関係あるようなタイトルを上梓してるせいなのか、私の中では<花>の詩人なのです。
 萩原朔太郎は、作品のイメージのせいなんだろうけど<竹>なんですけどね<まんまじゃんww
 
 ともあれ、三好達治の清涼として、美しく、切なく、儚い、また凛としているその世界を支えているのは、彼の愛した花々なのだと思います。

 「甃の上」
 あわれ 花びらながら
 をみなごに 花びらながれ
 をみなごしめやかに 語ひあゆみ
 うららかの跫音 空にながれ
 をりふしに瞳をあげて
 翳りなきみ寺の春をすぎゆくなり
 み寺の甍みどりにうるほひ
 廂々に
 風鐸のすがたしずかなれば
 ひとりなる
 わが身の影をあゆまする甃の上


 超越した美、というものがあるなら、これなのだと思いますm(__)m


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たら43回『音とリズムの文学散歩』


 本のたらいまわしTB企画「たら本」
 今回の主催様は「おかぼれもん。」のpicoさんです。お題は「音とリズムの文学散歩」


*****
それでは、43回目のたらい回し本のTB企画のはじまりはじまり〜♪
お題は、『音とリズムの文学散歩』

●小説に登場した心を捉えて離さない音楽
●または小説の世界に興味を抱き実際に聴いてみた音楽
●好みの音楽が登場して親近感が沸いた小説
●小説に登場する気になる音とリズム、オノマトペ
●文体のリズムが踊り小説自体がすでに音楽と化している
●小説に感化され楽器(音楽)をはじめたくなった

などなど、音楽を感じ音楽を抱きしめた文学を教えてください。
春の足音とか、そのオノマトペはどうなのか等のつっこみも大歓迎!
皆さんが体感した『音とリズムの文学散歩』記事を書いて、こちらの記事にTBしてくださいませ。
TB URLはコチラ→http://li-cafe.mond.jp/cgi/mt/coban^^_2525.cgi/1853
どなたでも参加OKです。
どんなお散歩ができるか楽しみにしてます!

*****


 久々のたら本です。
 なんか、タイミング外すと参加しにくいんだよね(汗)

 「音とリズム」かぁ…。
 一応そーいうのを職業にしてるので、お仕事の一貫として読んでることが多いなと、今再認識しました。

 ゆえに、

ひまわりの海
ひまわりの海
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舘野 泉 求龍堂 (2004/11)売り上げランキング: 132599


 舘野泉の「ひまわりの海」
 ピアニスト、舘野泉の発病前から左手のピアニストとして復帰するまでのエッセイ集。
 今や、左手のピアニストとして有名になった舘野さんですが、私にとって北欧ものの大家、そしてエッセイストとしてのイメージそのままなのです。
 彼のあるがままを自然に受け止める姿勢、そして音楽、ピアノへの愛情は揺るぎがなく、左手のピアニストとして復帰してこられたもの、舘野さんならありだなとすんなりと思った記憶があります。
 でも、この中に流れている音楽は、ピアノでしかありえない。
 透明で、深く、冴え冴えとした、北欧の白夜のようなピアノ。
 きっと、この根底に流れている音が、彼を支えていたのだろうと思います。音は、音楽は、人の生きる支えになりえるものなのです。



アマデウス
アマデウス
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ピーター シェファー Peter Shafer 江守 徹 劇書房 (2002/07)売り上げランキング: 282317


 ピーター・シェーファーの戯曲「アマデウス」
 映画「アマデウス」の原作となった作品です。
 映画とタイトルのせいで、モーツァルトの話のようにとられていますが、主役はサリエリです。音楽に、神に、全てを捧げ、努力してきたサリエリの前に、そういう努力を無価値だというような天才モーツァルトが現れ…。
 耳は天才を聞き分けられる才能を持っていたのに、作曲では二流のものしかかけないサリエリの悲劇。
 音楽は、残酷なのです。
 

絶対音感 (新潮文庫)
絶対音感 (新潮文庫)
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最相 葉月 新潮社 (2006/04)売り上げランキング: 31311


 最相 葉月の「絶対音感」
 むしろ、これも音楽の怖さを伝えるノンフィクションかも。
 なーんちゃって音感しかない私ですが、学生の頃は、聴音という聞いた音楽を楽譜にするという試験があったので、それをがりがりとやっていたわけです。その頃は、音楽を聴くと、全部頭の中で楽譜化していってました。
 音楽って、抽象的であるところが素敵なのに、無理矢理具象化してる感じで、しんどかったです。
 中で五嶋みどりの弟、龍くんの話が結構でてきます。

Ryu Goto
Ryu Goto
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五嶋龍 エルンスト パガニーニ リスト ルトスワフスキ 武満徹 ワーレングリーン(クリストファー) シャルリエ フィルハーモニア管弦楽団 高橋博子 ユニバーサル ミュージック クラシック (2005/08/03)売り上げランキング: 3315


 こんなに立派に大きくなって、妙に嬉しいww

 
遠方より無へ
遠方より無へ
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三善 晃 白水社 (2005/01/24)売り上げランキング: 390758


 三善晃「遠方より無へ」
 生が、死の、かりそめのたわむれでしかないように、音楽も、しょせん、無音の変容にすぎまい。沈思も華麗な虚空のよそおいである。

 作曲家、三善晃のエッセイ。
 卒業の時に弾いた縁もあって、とっても好きなのです。三善晃の音楽も、切子ガラスのような透明さがあるけど、エッセイもまた、独特の透明感に満ちています。それはまるで、瓶覗きの色のよう。
 作中に友達のピアニストが、指ならしの練習でショパンのエチュード「黒鍵」をものすごいスピードで弾いてるのが聞こえるっていうのがって、「黒鍵」聞くといつもそこを思い出してしまいますww

無伴奏ソナタ (ハヤカワ文庫 SF (644))
オースン・スコット・カード 野口 幸夫 早川書房 (1985/12)売り上げランキング: 367330


 カードのSF「無伴奏ソナタ」
 未来で、人は産まれた時にそのDNAで職業が決まってしまう。主人公は、音楽の才能があるとされ、音楽を生み出すことをのぞまれていく。が、彼は他の一切の音楽を聴くことは許されない。なぜなら、聞いてしまうと彼の生み出す音楽が彼の100%オリジナルではなくなるからだ。
 …って、ま、こういう話のオチはご想像通りで…。
 今、絶版なのかな?
 でも、これ読んでない人は、人生損してるよ。
 
 以上。
 でも、生まれ変わったら、絶対音感を身につけたいと思ってるww



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* by * 21:37 * たら本 * comments(8) * trackbacks(5) *
たらいまわし本のTB企画第39回 夢見る機械たち


 本のたらいまわしTB企画「たら本」
 今回の主催様は「奇妙な世界の片隅で」のkazuouさんです。お題は「夢見る機械たち」

 昔から人間は「道具」や「機械」を使って、生身の体では不可能なことを可能にしてきました。日常生活しかり、移動手段しかり。そして物語の中においては、それらは夢や空想を実現する手段としても使われてきたのです。
 今回は『夢見る機械たち』と題して、そんな不思議な「道具」や「機械」を扱った作品を集めてみたいと思います。主要なテーマになっているものでも、印象に残った小道具でもかまいません。漫画やノンフィクションも含めて、いろんな作品を挙げていただきたいです。
 とくにSFやファンタジーにこだわる必要はありませんので、広い意味で「道具」や「機械」がテーマとなっている作品を挙げていただけるといいなあ、と考えています。


 「夢見る機械」で、いきなり脳内リンクしたのは、

クリスティーン〈下巻〉 クリスティーン
 スティーブン・キングの「クリスティーン」
 ある日、気弱なアニーは廃車になっていた車を手に入れる。そしてその車は意思を持っていた…。
 
 主人公は、アニーの友達なんだけど、クリスティーンに恐怖しながら、でも一番切なく思ってるのはアニーの変化だったりする。その辺の描き方がやっぱりキングは上手いのです。最後の方の1行はまじで泣けます。つか、私はそこで号泣したよ。
 キングって本当は車が怖いのかな。
 「回想のビュイック8」でも怖い車を描いてます。あと、「クージョ」は車から出られなくなる話だしな。
 ちなみに「クリスティーン」は映画化されてます。
クリスティーン コレクターズ・エディション
 …怖くて、見たことないですww

 キングときたら、やっぱりディーン・クーンツを。
 「ミッドナイト」は中期の名作。狂ったコンピューターに支配されていく街を描いてます。
 同時期に文春文庫から出た「ストレンジャーズ」「ウォッチャーズ」は名作です。異種なものと遭遇した時、人はなにをして人といえるのか、明日に向って生きるとはどういうことなのか、エンターテイメントなSFを読んでいたはずなのに読後はじっくり考えさせられます。

 アン・マキャフリーの「歌う船」
 生まれた時、彼女の脳は申し分なかったのに身体は機械の助けなしには生きられなかった。そして彼女は、宇宙船になった。16歳の女の子は、機械の、宇宙船の身体で、感じ、喜び、歌う。
 感性に打ちのめされます。
 …うーん。上手い言葉が見つけられないな。これは、読めばわかります。読めば、遠い昔、なんだかきらきらしていた純粋だった無垢だった自分が見えます。
 この「歌う船」シリーズは、以下、「旅立つ船」「魔法の船」「友なる船」「戦う都市」と、続きます。



大聖堂 (上) (SB文庫)大聖堂 (中) (SB文庫)大聖堂 (下) (SB文庫)
 
 最後に、ケン・フォレットの「大聖堂」を。
 ケン・フォレットといえば、「レベッカへの鍵」「針の眼」「ペテルブルグから来た男」などのスパイ小説が有名ですが、「大聖堂」はがっちりした大河小説です。
 12世紀のイングランドで、大聖堂を作ることを夢見る家族の一大叙事詩。
 読み始めたら、読み終わるまで息がつけないぐらいの密度で迫ってきます。
 どこが「夢見る機械」なんだといわれると困るんだけど、主人公達の大聖堂への憧れはあまりにも純粋で深い、だから、むしろ大聖堂が作られる時を眠りながら待っている、そんな印象を持ってしまうような、大聖堂に人格を感じてしまうような作品なのです。

 …そういや、最近「SONY AIBO」ってあんまり見ない、つか、話聞かないけど、どうなってるんだろう…??

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* by * 21:17 * たら本 * comments(7) * trackbacks(5) *
たらいまわし本のTB企画第38回 「何か面白い本ない?」という無謀な問いかけに答える


 本のたらいまわし企画「たら本」
 今回の主催は、<りつこの読書メモ>のりつこさんです。

本好きの人なら一度は言われたことがあるのではないでしょうか、このセリフ。こんなことを言われても、その人がどんな本を好むのかも、今までどういう本を読んできたのかも、何を面白と思うのかもわからなければ、答えようがありません。それでもこう聞かれたら、何が何でも面白いと言わせる本を紹介したい!この挑戦を受けて立ちたい!と思いませんか?

普段本を読まないあの人でも、「登場人物の名前がなかなか覚えられなくて…」と言っているあの人でも、「携帯があれば本なんかいらない」と言っているあの人でも、寝食忘れて読んでしまうぐらい面白い本。本の世界から離れたくない、読み終わりたくないと思うくらいの面白い本。あなたにはそんな本がありませんか?

というわけで今回のテーマはこれです。「何か面白い本ない?」。


 ははは、むしろこれには痛い思い出が。
 中高の頃、渡辺淳一、吉行淳之介、司馬遼太郎、五木寛之、を愛読していたエロい(ww)私。で、とーってもエロいの読んでる、もしくは読み終わった時に限って、友人が「面白い本ない」といってくる。…つい、読み終わったのをそのまま貸して、がっつり引かれました。アイタタ。
 でも、やっぱり「面白い本ない?」と聞かれたら、自分にとって面白い本を紹介しちゃいますよね。その人の好みじゃ絶対ないぞ、と思ってても。
 だから、以下は「面白いから読んでみて」というより、「これはすごい面白いのになんだか評価されてない気がする」って感じの本です。
 ちなみに、私の芥川龍之介のベストは「六の宮の姫君」で村上春樹のベストは「土の中の彼女の小さな犬」です。多分、これで私のピントのはずしっぷりがわかっていただけるかと…ww



蒼穹のかなたへ〈上〉 (文春文庫)
ロバート ゴダード Robert Goddard 加地 美知子 文藝春秋 (1997/08)売り上げランキング: 194717
 
蒼穹のかなたへ〈下〉 (文春文庫)
ロバート ゴダード Robert Goddard 加地 美知子 文藝春秋 (1997/08)売り上げランキング: 195061


 ロバート・ゴダードの「蒼穹の彼方に」
 これはでも、このミスのベストにはいってたはず。で、読み終わって本を閉じて、帯が目にはいったら、打ちのめされるぐらいズンと来ますよ、と強力プッシュし続けてるんですけど、どうも反応がいまいち。
 多分、主人公がダメオヤジだからなんでしょうね。
 私は、オヤジ大好きなので、このだめだめっぷりがむしろ愛しいんですが。それに、だめだめでも、自分の信念のためにぼろぼろになって動き続けるんですよ。かっちょいいです。
 悪役がね、また格好よくて…。


12月の扉〈上〉
12月の扉〈上〉
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ディーン・R. クーンツ 細美 遥子 ディーン・R・クーンツ 東京創元社 (1989/03)売り上げランキング: 478980
  
12月の扉〈下〉
12月の扉〈下〉
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細美 遥子 ディーン・R・クーンツ 東京創元社 (1989/03)売り上げランキング: 369639


 ディーン・クーンツ「十二月の扉」
 拙作のサイトの名前にいただいたクーンツのSFホラー。
 アメリカじゃあ、キングと並び称されるクーンツなんですが、日本の人気はいまいち。そうこうしてたら、超訳とかに翻訳権奪われて、クーンツファンは長きにわたって涙を飲んできました。
 が、どうやら、超訳は手を引いた模様。めでたい。
 クーンツの魅力はなんといっても「人は変われる」「明日は絶対やってくる」という絶対ポジティブ。十二月の扉は、初期作品なのでその色合いが薄いといえば薄いけど、やっぱりポジティブです。
 読み出したら、止まらないこと請け合いです。


花神〈上〉 (新潮文庫)
司馬 遼太郎 新潮社 (1976/08)売り上げランキング: 23698
  
花神 (下巻) (新潮文庫)
司馬 遼太郎 新潮社 (1976/08)売り上げランキング: 38555


 司馬遼太郎「花神」
 明治維新を舞台に、陸軍大臣になった大村益次郎の生涯を描いています。大河ドラマにもなった。
 つか、大河みてはまった。
 この大村益次郎が、江戸末期〜明治の人とは思えないほど合理性の人。晩酌の肴は、年中豆腐。別に豆腐が好きだったからではなく、豆腐は栄養価が高いけれど、安価だからと、しれっと語る。また、「物事を承諾するには理由がいらないが、拒絶するには理由がいる」と、理由があげられない(この理由も彼の合理性にそったものなのだけど)ものは断らない。断る時は、1ミリの隙もないような理論でくる。
 ま、人には感情があるから、この合理性ばかりを押し付けられるとしんどいかなと思います。特に、明治維新の頃って誰もがヒロイズムに酔っていたような感じだから、とんでもなく異質だったんだろう。
 でもこの合理性で物事が進んでいけば結局は楽だし、早くできる。なんだか最後の方は憧れまで感じてました。
 ともあれ、大村益次郎の話だけでは司馬遼太郎氏、地味だと思ったのか、維新志士たちの豪華ラインナップが楽しめるのも嬉しい。


たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)
ジェイムズ,ジュニア ティプトリー 浅倉 久志 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア 早川書房 (1987/10)売り上げランキング: 20514


 J・ティプトリー・JR「たったひとつの冴えたやりかた」
 SFの古典といわれる名作。
 短編集なので、ストーリーははしょります。
 もう、涙なしに読めないです。人の強さと愛が信じられる、そういうものに満たされる一作。
 彼女の長編「輝くもの天より墜ち」が、最近出版されてます。これも、胸が熱くなる名作。


警察署長〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)
スチュアート ウッズ 真野 明裕 早川書房 (1987/03)売り上げランキング: 31897
  
警察署長〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)
スチュアート ウッズ 真野 明裕 早川書房 (1987/03)売り上げランキング: 209615


 最後にスチュアート・ウッズの「警察署長」を。
 アメリカ南部架空の町「デラノ」を舞台に、3代の警察署長40年にわたっての話。
 アメリカでテレビドラマになってます。
 何もなかった場所に、街ができ、人が集まり…。警察組織ができて、保安官が警察署長になる導入から、とにかく引き込まれる。
 軸になるのは、のどかな田舎町でおこる連続殺人事件なのだけど(ただスタンスが長いし、単に行方不明とされてる場合が多いので、住人は自分には関係のないことと感じている)これに、町の移り変わりが上手く溶け合っている。つか、本当の主人公は町なんじゃないだろうかと思えるぐらい。
 人と人、事件と事件が絡み合って……最後は号泣もんでした。
 これはウッズのデビュー作だそうで。この後は、彼は地道に作品だしてます。でもって、どれも面白い。

 昔鈴木光司「リング」が出た頃、読んでこりゃすごいと、周りがあきれるぐらいプッシュしてたら、あれよあれよとあのムーブメントになって……周りに本を薦めて唯一の自慢できる話です。
 おそまつm(__)m
* by * 11:15 * たら本 * comments(8) * trackbacks(2) *
たら本37回「犬にかまけて」


 本のたらいまわし企画、略して「たら本」
 今回の主催は、「本を読む女。改訂版」のざれこさんです。

町田康は猫にかまけておりますが、私は犬にかまけております。
産まれた時から犬が家にいて当然の生活送ってました。犬は私の人生になくてはならない存在。
今も「ホワイト家族」のお父さんにそっくりな犬がいます。かわいいのだ。

そんな犬派の私、「たら本」過去のお題に「猫」がいるのに「犬」がいない。
どういうことやねん。ということで単純明快ながらお題にさせてもらうことにしちゃいました。
主役、名脇役問わず、ステキな犬たち、そして犬とともに生活していく人達が描かれた作品、
私自身がとっても読みたいと思っています。是非いろいろ教えて下さい。

昔から犬が死んじゃったりする映画とか本とかでは人が死んじゃうより号泣してしまう人間で、
そういうのは実は鬼門だったりしますが、でもそれでもかまいません。
いろんな犬たち、お待ちしています。


 犬か…。
 小さい頃に、犬に噛まれて長い間トラウマになってました。が、そんな私の価値観をがっつり変えたのがこれ↓
ウォッチャーズ〈上〉 (文春文庫)
ディーン・R. クーンツ Dean R. Koontz 松本 剛史 文藝春秋 (1993/06)売り上げランキング: 140518
   
ウォッチャーズ〈下〉 (文春文庫)
Dean R. Koontz ディーン・R. クーンツ 松本 剛史 文藝春秋 (1993/06)売り上げランキング: 139531


 心に傷を負った男と女と、実験の対象とされていたゴールデンレトリーバー。この二人と1匹が、戦い、自分達の居場所を見つける物語。
 も、号泣もんです。でもって、このワンコ、アインシュタインがかわいいのなんのって。
 どうやらクーンツ、この作品を書く前ぐらいからゴールデンレトリーバーを飼い始めたらしくて、この後の作品には、一杯ワンコがでてきます。でもって、ワンコが好きっていうのが、単語一つ一つから行間から、あふれ出してます。

 
わるい愛〈上〉  わるい愛〈下〉

 ジョナサン・ケラーマンの小児専門臨床心理医アレックスシリーズの「わるい愛」
 主人公は、ある日迷い犬を保護します。
 これが、フレンチブルドックで、なかなか気骨のあるワンコなのです。
 1997年に出版されてるのだけど、この頃ってフレンチブルドックなんて、ほとんど知られてなかったと思う。つか、私はこの本で初めて知ったもの。「歪んだ果実」でのチェリモアといい、意外とケラーマン、流行を先読みしてるところがあるのかもしれない。
 …フレンチブルは身体の割に頭が重いので溺れる危険があるから、水を怖がるように訓練している、なんて、へぇな記述があります。
 この後、このワンコ、スパイク君はアレックスシリーズの大事なメンバーになって大活躍(?)いたします。

犬笛
犬笛
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西村 寿行 光文社 (1999/02)売り上げランキング: 186017


 まず、西村 寿行氏のご冥福をお祈りします。
 誘拐された娘は、特別な聴覚をもっていた。主人公は、娘と犬だけに聞こえる犬笛を頼りに、飼い犬とともに娘を探す。
 映画化もされました。主人公がぼろぼろになるのは、いいんだけど、一緒にワンコがぼろぼろになって、それでも一生懸命主人公についていってる姿が健気でねぇ。今じゃ、あのワンコの姿しか覚えてないよww

 やっぱり猫好きなので、ワンコ本はたいして読んでないですね。
 ああ、小さい頃のトラウマは今はすっかり払拭されてます。毎朝「きょうのワンコ」見てますからね。
 でも、飼うのはいいやww
  
* by * 15:43 * たら本 * comments(2) * trackbacks(2) *
たら本36回「少女の物語」


 本のたらいまわし企画、略して「たら本」
 今回の主催様はBOOKS AND DAYのnineさんです

 少女って特別な存在感を持っていると思います。透明感、美しさ、可憐さから、コンプレックス、頑なさ、意地、思いこみなどなど、プラスもマイナスも少女というカタチに内包されると独特の輝きを増す。と思います。
謎めいた美少女も素敵ですが、コンプレックスまみれの普通の(いやそれより劣っていようが!)少女も素敵なんです。  


 ってことで、吉田秋生「吉祥天女」
吉祥天女 (1) (小学館文庫) 吉祥天女 (2) (小学館文庫)

 最近、鈴木杏ちゃん主演で映画化されました。少女の美しさ、残忍さ、潔さ、全てが濃くはいってます。
 男にナイフをつきつけられて「顔だけはやめて」と懇願したあと、その男の耳を切り落とし「女は血なんか怖くないの。毎月血を流してるのだから」と笑う小夜子。これほど完璧な<少女>はいない。

 ジョナサン・キャロル「蜂の巣にキス」そして渡辺淳一の「阿寒に果つ」も、あまりに美しく奔放だったゆえに、若くして命を落としてしまう少女の話。
 そして、両作とも後に男友達がその死の理由を尋ねるんだけど…男性ってこういうところがへんにセンチメンタルっすねと毎度思います。ま、この辺りが女性は現実的といわれる所以なのかもしれないけど。

 ジョナサン・ケラーマンの「少女ホリーの埋れた怒り」は、上記の作品たちと違って、美しくもなく賢くもない少女の話。
 地味でほとんど引きこもっていたような少女が突然小学校でテロ事件を起す。少女は即座に射殺されたのだが、臨床心理医のアレックスは少女に何があったのかを調べ始める。
 無知だったけれど、純粋だったゆえに、大人に利用されてしまったホリー。切なすぎます。

 切ない少女といえば、大崎善生の「ドナウよ、静かに流れよ」

ドナウよ、静かに流れよ (文春文庫)

 19歳でドナウに投身自殺した少女のノンフィクション。
 明るく活発だった少女が、留学先で精神を病んだ男と知り合い、次第に転がり落ちていく。そのさまが切ないです。
 その男と知り合わなければ、今も彼女は元気に生きていたのかもしれない。
 …いや、彼女の中にその男と引き合う暗黒があって、その男と知り合わなくても、いつか別の同じような男に引かれていったのかもしれない…。
 
 最後に、小野不由美十二国記「風の万里 黎明の空」を。
 異世界に引き戻された陽子が、成長し王となる物語。 
 「他者に頭を下げさせて、それで己の地位を確認しなければ安心できない者のことなど、私は知らない」(中略)
 「真実、相手に感謝し、心から尊敬の念を感じたときには、自然に頭が下がるものなのだ。礼は心の中にあるものを表すためのもので、形によって心を量るためのものではないだろう。礼の名のもとに他者に礼拝を押しつけることは、他者の頭に上に足を載せて、地になすりつける行為のように感じる」

 これは名言です。
 政治家とか、世のエラソーにやってるヤツとか、読め!!って思います。
 でも、これはある意味、少女だから言えた言葉かもね。

* by * 21:01 * たら本 * comments(10) * trackbacks(6) *
たら本35回「おすすめ!子どもの本」


 主催者さまが決めたタイトルにTBしていく、本のたらいまわし、略して「たら本」
 今回の主催は、ほんの保管所の高さん です。

さてさて、今回のお題は、「おすすめ! 子どもの本」であります。
本好きの皆さまのこと、きっと幼い頃もさまざまな本と親しんでこられたことと思います。
「ノンタン」シリーズの絵本、アンデルセンやディズニーのお話、日本昔話、教科書に載っていたお話、世界名作劇場、ライトノベル、まんが、児童文学、一般文芸・・・ 世の中には沢山の本があふれていて、一生のうちに出会える本は限られています。でも子どもの頃に出会ったお話って、その後の自分の読書傾向や、時には人生に臨む姿勢にまで影響を与えることがありますよね。
と、いうことで、ここでは皆さまがおすすめする子どもの本を紹介していただきたいと思います。

◎幼い頃に読んで今も大好きな本
◎大人になってから読んで “しまった。もっと早く子どものうちに読んでおけば” と思った本
◎自分の子ども、又は身近なかわいいあの子、幼い頃の自分に読ませたい本


 幼少期、夢中になっていたのは、「ジャングルブック」

ジャングル・ブック―オオカミ少年モウグリの物語〈第1部〉

 飛び出す絵本で読んで、衝撃を受けました。一体、何に衝撃を受けたのはいまではよくわからないんだけど、あれのお陰で「本っておもしろい」と思ったのは確か。
 後日、「ジャングル大帝」に、肩透かしをくらったのは内緒ですww
 いや、「ジャングルブック」ぐらいの衝撃を期待してたもんで…単に子供ゆえの思い込みで、ジャングルつながりで、無意味に期待してたみたい。

 「ジャングル大帝」つながりになりますが、

海のトリトン DVD-BOX

 「海のトリトン」に夢中でした。
 昔のアニメなのに、勧善懲悪じゃないんだよ。ラストなんて、むしろトリトンが悪者になっちゃうんだよ。すごすぎる。
 ちなみに、今でも、主題歌歌えますww

 勧善懲悪じゃないといえば、これ。

スーホの白い馬―モンゴル民話

 「スーホの白い馬」
 小学2年、後半の教科書の最後にのってました。子供の頃、教科書をもらうとすぐに全部読んでました。で、号泣。
 こんなに泣いちゃ、実際授業でやるときにやばいと、思って、それからしばらく毎日読んで毎日泣いてました。特訓のおかげで(?)授業でやるときは、鼻がぐずぐずするぐらいでとどめられたww
 でも、これのお陰で馬頭琴をまともに見られないです。見ると、涙腺が刺激される。

 そして「ちびっこカムのぼうけん」
 湖を表現するところが、すごく美しいのです。
 これを読まなければ、もしかして自分で書こう、なんて思わなかったかもしれない。

 こうやってふりかえると、今に至る理由みたいなのが、やっぱり感じられて苦笑いしてしまいます。一体、この暗いもの好みは、どこの遺伝子に潜んでいたんだろう??

 最後に、一番影響与えられたかもしれない「少年ドラマシリーズ」

NHK少年ドラマシリーズ つぶやき岩の秘密
 「つぶやき岩の秘密」
 
 少年ドラマシリーズの中でも、暗さ、地味さ、ぴかいちです。
 でも、なぜか強烈に印象が残っています。歌がよかった。

 あと「タイムトラベラー」も「赤外音楽」「およね平吉時穴道行」「巣立つ日まで」などなど。
 海外の子供むけドラマも放送してて、タイトル忘れちゃたけど、ロンドンを舞台にした銀のキツネと呼ばれる怪盗(?)が出る話とか…。
 とにかく、面白かった。
 毎日、夕方が楽しみだったなぁ。
 
 多分、この辺でセンチメンタルの素地ができたに違いないww
 ホント、子供の頃っていいもの読んで、見てたなと思います。その点、今の子供はちょっと可愛そうかもね。NHKさん、少年ドラマシリーズ、またやってくださいな。
 「六番目の小夜子」で、やっぱNHKがきちんとジュブナイルドラマを作ると、ちがうもんだって感心してたんだから。

六番目の小夜子 第一集
* by * 21:26 * たら本 * comments(12) * trackbacks(5) *
たらいまわし企画・第34回「行ってみたいあの場所へ〜魅惑の舞台」
 主催者がたらいまわしで決められ、主催者が決めたお題で本を紹介していく、それが「たらいまわし・本のTB企画」通称「たら本」です。第34回主催は、Ciel Bleu の四季さんです

今回のお題は、「行ってみたいあの場所へ〜魅惑の舞台」です。
本を読んでいる時に、「ああ、この場所に行ってみたい」と思うことってありませんか? それはどこかの街角かもしれないですし、雄大な自然の中かもしれません。過去の歴史の中の場所かもしれないし、架空の世界かもしれません。紀行文を読んでいて、思わず旅に出たくなってしまうこともあるでしょう。フィクション、ノンフィクション問いません。本を読んでいて行ってみたくてたまらなくなった場所があれば、ぜひ教えて下さい。もちろん、その本がきっかけで思わず本当に行ってしまった…!というのもアリです。^^
さて、あなたが行ってみたいと思われるのは、どこでしょう?


緋色のヴェネツィア―聖(サン)マルコ殺人事件

 行って見たいところ、といわれ「ヴェネチア」と即答すること○○年ww
 とりあえず、20世紀中に沈没するといわれていたけど、まだ大丈夫なので、私がいける可能性もまだあるみたいです。
 ヴェネチアほど、ロマンなところはないでしょ。
 泥土に杭をうち、その上に石をおいて、街をつくってしまった。そして、1000年も海の都として、君臨していた…。ロマンだ。
 ってことで、塩野七生の「海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年」をあげてもよかったのですが、今回は「緋色のヴェネツィア―聖(サン)マルコ殺人事件」を。貴族の坊ちゃん(<をい)マルコが巻き込まれた殺人事件を追います。ヴェネチアをはじめとする古い都市って、ルネサンスのものを読んでいても、その風景が容易に想像できるから、かえって空間が歪められてる感じがして、たまんないです。
 このシリーズは、その後「銀色のフィレンツェ―メディチ家殺人事件」「黄金のローマ―法王庁殺人事件」に続きます。


puzzle

 次に「軍艦島」
 長崎県にある無人島です。昔海底炭鉱があって、今は廃墟になっています。つか、廃墟といえばここ、ってぐらい有名。
 なので、軍艦島を舞台にした小説は、色々読みましたが、恩田陸の「puzzle」が一番、軍艦島らしかったな。
 って、なにをしてらしいのか、つっこまれると困るんですが…。
 NHKドラマ「深く潜れ〜八犬伝2001」は、さすがNHK、なんか圧力かけた??ってぐらい軍艦島がいっぱいでてきて、素晴らしかったです。(危険ってことで、なかなか入島できないらしいです)

 飾り火〈上〉飾り火〈下〉

 連城三紀彦の恋愛、つか、不倫ミステリー。
 舞台は、仙台、鎌倉、浮御堂…。
 浮御堂は、琵琶湖の湖上に突き出たようにたっている小さなお堂。芭蕉が「鎖明て 月さし入よ 浮御堂」と詠んだ場所。
 この「飾り火」はドラマになってまして、この浮御堂のシーンがよかったわけです。ははは。
 だもんで、行きたいとずーーーーと、思ってるんですが、多分行かない。

 そう、ヴェネチアにしろ、軍艦島にしろ、いかないでずーーっと憧れてることに意味がある気がしてます。というか、好きで好きで、自分のイマジネーションの全てを注ぎ込んだ、自分の「ヴェネチア」に「軍艦島」に「浮御堂」が存在しているので、リアルでそれを壊されたくない、壊されることに怯えてるかもしれないですね。

 マリカのソファー/バリ夢日記

 これだけは、最初に場所があって読んだ本。
 バリに旅行にいくことになって、あちこち本を探してて読んだけど、一番これがしっくりきました。
 「地球の歩き方」とか「るるぶ」とか、便利だけど、それが伝えるのは情報だけで、空気じゃない。私は、行く前に空気とか、体感温度とかが知りたかった。
 内容については、色々つっこみ所がありますが、バリの空気や温度や湿度が的確に伝わってます。
 バリにはウブドという山間の街があります。熱帯で、山間、しかも売りは棚田が広がる風景…カエルがいっぱい???
 両生類は虫類は、絶対だめな私なので、そこは最初から却下してました。でも、「マリカのソファー」読むと、行ったらよかったかなぁとちょっと後悔してしまいます。
 やっぱり、小説家はすごいねww
* by * 22:04 * たら本 * comments(14) * trackbacks(4) *
たらいまわし・本のTB企画 第33回「悪いやつ」
たら本バーナー
 主催者がたらいまわしで決められ、主催者が決めたお題で本を紹介していく、それが「たらいまわし・本のTB企画」通称「たら本」です。第32回主催「柊舎の書庫」のむつぞーさんから、私に回ってきましたm(__)m
 今回の御題は「悪いやつ」です。
 古今東西、文学にかかせない存在、それが「悪いやつ」です。
 こんな人に(ものに)惚れたらとんでもないことになる、とわかっていても、どうにも止められない。「悪いやつ」には、いつも幻惑されます。
 それは、自分が暗黒面に踏み込むことがないと信じている故の憧れなのか、自分の中に悪の芽があることを知っているからの恐れなのでしょうか。
 ともあれ「悪いやつ」が魅力的であればあるほど、物語は鮮やかになるのです。
 
 ということで、あなたの「悪いやつ」を教えて下さいm(__)m
 
 皆様の参加を、お待ちしております。初めての方も大歓迎です。どうぞ、お気軽に。次回は、Ciel Bleu の四季さんです。*過去のたら本はこちらです。


燃えよ剣

 まず、司馬遼太郎の「燃えよ剣」です。
 新撰組副長土方歳三の鮮烈な一生の話。
 冷徹な殺戮者と言われた彼を、稀代のロマンチストに昇華させた司馬遼太郎は、やはりすごい。新撰組のため潔く泥をかぶり(隊士達に、いい話は近藤の口から、悪い話は土方が伝えて、憎悪を自分の身ひとつで受け止めていたという一節があります)最後まで戦った彼は、自分自身の筋を通した人といえるでしょう。
 悪いやつは、そうやってどんな障害があろうと自分の筋を通すことができる人であり、それが魅力なのかもしれません。

 
チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷

 塩野七生の「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」
 チェーザレ・ボルジアも歴史的敗者です。後の歴史は、敗者に対して容赦ないから、チェーザレも冷酷で残忍などと散々な言われ方をされてきました。確かに、暗殺や謀殺は当たり前で、処刑するとヴラド・ツェペシュ(ドラキュラ公)並みのことをやっています。
 そのチェーザレを美しくそして生き生きと蘇らせたのは、塩野七生です。
 イタリア統一の野望に向かい、家柄も策も行動力もあった男。目的のためには手段を選ばないという純然たる態度。あまりにも強烈で鮮やかなので、目をそらすことができない。チェーザレは、そんなカリスマ性をもっていた人。
 そして、そんなカリスマ性がなければ、悪いやつも悪いやつになりきれないのです。


渡辺淳一全集 (第5巻)

 前出の二人に比べるとがくっとスケールが小さくなりますが、渡辺淳一の「阿寒に果つ」
 17歳の少女が自殺をする。その死の原因をさぐるため、同級生の男の子が少女の付き合っていた男たちを訪ねていく。
 この少女が典型的な「ファムファタール」 男を惑わせ、破滅させていきます。なのに、男たちの骨抜きにされ具合ときたら…。
 主人公は「一体どれが本当の純子なのか」と思い悩むのだけど、誰にも本当の姿がわからないのがファムファタールが、ファムファタールである所以なのです。
 少女の悪女というと、純粋さ故の残酷がほとんどですが、これの少女は意思をもって周りを振り回しています。だからこそ、周りは本当の彼女を見つけることができない。
 そう、悪いやつは相対する人間によって、自由に自分を変えられるのです。
 渡辺淳一の「無影燈」も直江医師という悪いやつが出てきます。中居正広主演で「白い影」というタイトルでドラマにもなったけど、原作の直江医師のダークさは半端じゃありません。


評伝シャア・アズナブル 《赤い彗星》の軌跡 上巻   評伝シャア・アズナブル 《赤い彗星》の軌跡 下巻

 最後に、皆川ゆかの「評伝シャア・アズナブル」を。
 機動戦士ガンダムシリーズのシャアの言葉をたどりながら、シャアの生涯を描いたまさに王道の評伝です。
 こうやって考えると、シャアは100%「悪いやつ」なのです。自分の筋、正義だけを通し、その為には手段を選ばない。仮面をつけ素顔を隠し、嘘も平静に口にする。その上美しいww
 …思うに、クリエーターは皆、それぞれ心に理想の「悪いやつ」がいるのだと思います。それをまとめて形にしたら、シャアになった。つまり、シャアは悪役の完全理想形なのではないかと。私は、そんな風に感じます。

 これを書きながら、小学生の頃母親によく言われてた言葉を思い出していました。
 それは「お前は、大きくなったら絶対悪い男にだまされる」と。
 一体何を根拠にそんなことを言い続けていたのか謎ですが、とりあえず危なそうな男には近づかなかったので今平和に暮らしてます。が、どうやら根っこで私は「悪いやつ」がとっても好きなんですね。…小学生の頃からそんな嗜好してたのか、自分…。
 ともあれ、悪い男に惚れるのは小説の中だけでよかったな、としみじみしております。
 「親の言葉と茄子の花には千にひとつの無駄もない」とはよく言ったもんだ。
* by * 17:05 * たら本 * comments(23) * trackbacks(15) *
たら本第32回「ねこ・ネコ・猫の本」  【スティーブン・キング「ペット・セマタリー」】
ペット・セマタリー〈上〉 ペット・セマタリー〈下〉

 たら本第32回、主催は「柊舎の書庫」むつぞーさん。お題は「ねこ・ネコ・猫の本」

猫と本あるいは猫と文学…というのは、とっても似合うとおもいませんか?
時に愛らしく、時にふてぶてしく、身近な存在でありながらミステリアスな雰囲気をもつ猫。
多くの作家達にも愛された猫は、いろんな本に登場していると思います。
そんな猫が出てくるお気に入りの本を教えて下さい。


 なので、スティーブン・キング「ペットセマタリー」
 映画化もされてます。
 息子が大事にしていた猫が死んで、禁断の地に埋葬した。すると猫は、再び家にもどっきた。恐ろしい存在となって…。
 多分、これはジェイコブズの「猿の手」が根底にあるのだと思う。というと、ネタバレのようだが、キングなのでネタがわかってても、面白いし怖い。その重要な要素となるのが、猫の存在。けれど、憎みきることのできない猫なのだ。
 キングは猫が好きなのだろう。とにかく、よく猫がでてくる。
 そして、そんな猫好きだから、猫の存在がただ怖い、不気味というのではなく、あわれがある。
 鍋島の化け猫の話とは、えらい違いだ。

 と、大和和紀「影のイゾルデ」
 これは、大和和紀による「レベッカ」といえるだろう。けれど、舞台がニューオリンズ。だからなのだろうか、けだるさと廃頽と耽美に満ちている。(「エンゼル・ハート」のオカルト的な舞台はニューオリンズだった。そういう土地柄なのかも)
 その中に、影のように存在する、黒猫。
 美しくしなやかで、残酷。あまりの気高さに、無条件にひれ伏してしまいたくなる。
 そんな猫。

 そう、猫は、かわいらしさで人間を手中にしたのではない。
 本当は、その残酷さ、美しさ、移り身の速さで、人を虜にしてきたのだ。可愛い仕草や表情を見せ、甘えてくるようだけど、それはかりそめ。それは一瞬で変わる。
 猫は、猫だけの時間を生きている。
 猫に、昨日はない。その瞬間だけに、生きている。

 ああだから、「夏への扉」は猫なのだ。猫でなければならなかった。
 犬は「今」に存在する。扉の向こうへ行くことはない。猫は、明日だろうが、夏へのだろうが、扉をするっと通り抜ける。抜けることが出来る。
 猫は、偉大だ。
 
 最後に、普通に可愛い猫に会いたい方に。
 岩合さんの本は、10000%猫への愛情に溢れてます。も、この表紙みただけで、顔がへらっとしてしまいます。
 かあいいよぉ。
きょうも、いいネコに出会えた
* by * 21:54 * たら本 * comments(8) * trackbacks(7) *
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